血管探索記

腫瘍や血管の病気のこと、日々に出会ったものから連想する科学、旅行記、コラムなどを記します。

思い出と、哲学と         

結果より原因に切り込め・・・とはいうものの。

私が医学生の頃、所属していた医学英語のサークルでフィンランドの先生をお招きして勉強会をしていました。彼は今では当たり前になったキシリトールの研究をされていましたが、当時はまだ、誰もそんな物質を知りませんでした。 ある時、勉強会で当てられ質問…

プロバンスの結婚式 最終回

翌日、僕の宿泊するホテルに集合した5人は海へと出かけた。せっかく地中海まで来たのだから海水浴をしなければ。 ホテルのプライベートビーチへ行き、夕方まで巨大な砂の楼閣を作り、泳ぎ、そして昨夜のことを思い出しながら青空を見上げた。海の水はまだ冷…

プロバンスの結婚式⑤

プロバンスの結婚式はいよいよ佳境に入った。そこは瀟洒なレストラン。手入れの行き届いた南国情緒あふれる植物が、駐車場からアプローチへと導いてくれた。会場はドイツ語を話すグループとフランス語を話すグループに分けられたが、どちらにも所属する人も…

プロバンスの結婚式④

前回↓ <a href="http://drmasa.hatenablog.com/entry/2015/08/26/121753" data-mce-href="http://drmasa.hatenablog.com/entry/2015/08/26/121753">プロバンスの結婚式③ - 血管探索記</a>drmasa.hatenablog.com 役場、教会、そしてガーデンパーティと続いてきた式次第に参加していた人々は、午後になると皆、帰って行った。そこで新婦のご両親がこう仰った。 「ではこれからお昼寝をしましょう。好きな場…

プロバンスの結婚式③

前回↓ プロバンスの結婚式② - 血管探索記drmasa.hatenablog.com フラワーシャワーの祝福を受けて教会を出た新郎新婦は、参列者とともに新婦の実家へと向かうことになる。この地方では新婦サイドが結婚式の儀式一連を、取り仕切る習わしなのだ。新婦のお宅に…

プロバンスの結婚式②

&lt;a href="http://drmasa.hatenablog.com/entry/2015/08/17/092516" data-mce-href="http://drmasa.hatenablog.com/entry/2015/08/17/092516"&gt;プロバンスの結婚式① - 血管探索記&lt;/a&gt; ↑前回 結婚式はまず、モンペリエの町役場で婚姻届を提出すると…

プロバンスの結婚式①

プロバンスの結婚式(序章) - 血管探索記↑前回 ラベンダーの見頃を少し過ぎ、地中海での海水浴に向いていて、蝉時雨が聞こえていた、あれはそう、2001年7月下旬のことだった。 ドイツから車で二日がかり。途中リヨンで一泊しながらプロバンスへと南下してい…

プロバンスの結婚式(序章)

1999年6月初旬、僕のドイツ留学はゲッティンゲンという街にある語学学校、ゲーテインスティテュートからスタートした。 そこで何とはなしにできた仲良し五人組は、我が生涯の財産となった。 僕以外の四人は以下のようなメンバーだ。アメリカハーバード出身で…

GS night shift vol.6 軽自動車は軽油じゃ・・・

油種間違いはもっとも恐ろしいミスだ。 同僚で「軽自動車には軽油を入れる」という固定観念から抜けられない人がいた。そして実際に、軽自動車(ガソリン車)に軽油を入れてしまったのである。この場合、対処方法がある。JAFを呼んでタンクの軽油を抜き取っ…

GS night shift vol.5 安全確認怠るべからず

世の中にはいろいろな人がいる。さすがに夜中ともなるとあまり無理な要求は無いが、まだ正社員さんがいる夕方の時間帯には、ハプニングがある。 あるとき、店長が対応したお客さんが、エンジンルームの点検を無理矢理要求した。本来していないサービスである…

GS night shift vol.4 給油口はどこだ!

ガソリンスタンドは現在、セルフが大部分だ。 僕がドイツに移住した時(1999-2002)、欧州では既にそうなっていたが、僕はバイト経験のおかげですんなりとそのシステムに溶け込めた。だが、バイト時代(1986ー1990)はセルフのスタンドは日本に存在しなかった。…

ガソリンスタンドの夜勤というもの その3

苦しい夜が明け、疲れた身体に鞭打つようにラッシュが始まる7時半頃、正社員さんが出勤してくる。そしてまずチェックされることは、金銭出納が正確であるかどうかだ。 簡単に言えば、前夜、社員が帰宅した際にチェックしたレジの金額と、現在の金額との差額…

ガソリンスタンドの夜勤というもの その2

僕がアルバイトをしていたガソリンスタンドは日本石油(現在のENEOS)だった。制服に着替えた状態でスタンドに到着すると、まず全員集合し、店長からのお言葉がある。そして、バイトだけ集まって大声で「規則」を叫ぶ。 「ひとーつ!油種を確認する!」「ひと…

ガソリンスタンドの夜勤というもの その1

僕が大学1年~4年くらいまで、常磐自動車道守谷サービスエリア(上り)のガソリンスタンドで夜勤のアルバイトをしていた話はまだ書いたことが無かったように思う。ここでは、数限りなく、いろいろ貴重な経験をした。 大学の授業が終わってから、夕方6時頃ま…

人さらいの思いで

子供の頃は、よく祖母と旅をした。共働きの両親に代わり僕の面倒を見てくれたのだ。おかげで鍵っ子にもならずにすんだ。(但し彼女は、時々パチンコに熱中して僕が学校から帰る時間を忘れたりしたけれど。) ある旅の途中、祖母が切符を買いに行っている間、僕…

ポケットティッシュ

街角で「よろしくお願いしまーす」と言いながら、腕を大きく回してポケットティッシュを渡そうとする人々がいる。僕は以前、こうした人に出くわすと、あからさまに嫌そうな顔をしたり、足早に通り過ぎたりしていた。 でも、今は考えを変えている。もし自分が…

希望とは

以前、パンドラの箱に入っていた女神Elpis(エルピス)について書いた。 エルピス(希望)とパンドラの箱 - 血管探索記drmasa.hatenablog.com エルピスは希望の神である。では希望(hope)とは何であろうか。おそらく皆一人一人違う考えを持っているだろう。そ…

Don't worry, be happy!

幸福度とは「達成目標に関する期待値と実効値の差が最小となったとき最大化する」と仮定しよう。幸福になりたければ、実効値、つまり自分の成し遂げていること、を期待値に近づけるように努力する。 しかし、それが困難な場合は逆に、期待値を下げてもよい。…

エルピス(希望)とパンドラの箱

ギリシャ神話に登場する人類初の女性パンドラが、その好奇心に負けてゼウスが送り込んだ箱の蓋を開けた時、ありとあらゆる邪悪なもの、悪魔達が世に放たれました。 その時、あわてて箱の蓋を閉めたパンドラにささやきかける声が聞えたそうです。 「私は"エル…

生きねば

僕が小学生の頃、千葉県では成田空港開港に反対する三里塚闘争が激化していた。実家の近くで、燃料輸送用パイプライン工事の説明会が開かれた時、左翼活動家が大集合したのを覚えている。僕が通学していた千葉大学西千葉キャンパスにも、過激さの差こそあれ…

肉は牛肉、豚にあらず(^∞^)!

今から数年前の話題を一つ。 8時間を超える手術の後で行ったお好み焼き屋さんで、師匠がこう言われた。 「大阪では肉といえば牛肉のことや」 ちなみに僕は血管内治療を生業としており、師匠もまた同じである。彼はコックさんではない。つまり、彼のこの発言…

駆け出しのころ

20年前の夏、27歳で医師3年目の僕は、大学院博士課程の一年生に在籍していた。 この夏は記録的な猛暑(1994年猛暑)に見舞われ、東京でも39℃を超える最高気温が観測されていた。大学入学以来、扇風機で過ごしていた僕も、医師になって給料をもらえる身分にな…

どこついだ?桜と杉菜

今日、近くの小学校に満開の桜を見に行った。その帰り道、近くの原っぱで土筆(ツクシ)が群生しているのを見つけた。ずっと忘れていたけれど、ツクシで思い出したことがある。 僕がまだ小学校にあがる前、父方の祖父が亡くなった。5月のことだった。人の死…