血管探索記

腫瘍や血管の病気のこと、日々に出会ったものから連想する科学、旅行記、コラムなどを記します。

ヨウ素ってどこで取れるの?

英語で、アイオディーンと発音するこのちょっとどす黒くて不気味な鉱物、これがヨウ素の結晶です。単体では劇物ですが、これをアルコールに溶かすとヨードチンキになります。

f:id:drmasa:20150501093621j:plain

実は、日本が世界第二位のヨウ素生産国であることはあまり知られていません。第一位はチリです。日本の生産量は約9000トンで、その半分は海外に輸出され、そのうち25%はヨード造影剤生産用となっています。

驚くべきことに日本産ヨウ素の八割は、我が故郷、千葉県の水溶性天然ガス鉱床 (南関東ガス田) から産出する地下水から生産されるのです。

僕は、以前勤めていた病院で、このガス田で働いている方を診察したことがあるのですが、ヨード造影剤に並々ならぬ興味を示していました。感慨深かったのでしょうね。自分が掘り出したヨードが欧州で加工され、また日本に運ばれ、そして自分の体に入ると考えれば、無理からぬことです。

造影剤を生産できる国はごくわずかしかありません。スウェーデン(GE)、イタリア(ブラッコ)、ドイツ(バイエル)そしてカナダ(コヴィディエン)。これだけです。他の国はこうした国々から粉(バルク)の状態で造影剤を輸入し、それぞれの国内で水に溶かしてバイアルやシリンジ入りという形の製品にして売るのです。(この過程で不純物が混入することがあり、造影剤アレルギーの主たる原因であるとも言われます。本当は造影剤アレルギーではなく、不純物に対するアレルギーであることが多いであろうということがよく言われます。)

日本も例外ではありません。折角原料のヨウ素をたくさん持っていながら、造影剤を作れない。これって、なんだかもったいない話しですよね。