ギリシャ神話に登場する人類初の女性パンドラが、その好奇心に負けてゼウスが送り込んだ箱の蓋を開けた時、ありとあらゆる邪悪なもの、悪魔達が世に放たれました。
その時、あわてて箱の蓋を閉めたパンドラにささやきかける声が聞えたそうです。
「私は"エルピス(hope)"です。どうかここから出して下さい。」
パンドラは、迷いつつもエルピスを外に出してやりました。
これが希望の始まりです。
人類に火を使うことを教え、ゼウスの怒りを買ったプロメテウスとその弟エピメーテウスを懲らしめるために送り込まれた、人類初の美女パンドラ。箱は開けてしまったけれど、希望をこの世に出してやったことは、その優しさからでしょうか。
それにしても謎なのは、ゼウスがなぜ悪魔の中にエルピスを忍ばせていたのか、ということでしょう。ゼウスの情けなのか、それとも、希望とは満たされぬ心の悪魔なのでしょうか?
「希望とは果されぬ約束である」と言った人がいるそうです。
しかし、数限りなく放たれた悪魔達に対抗して我々が生きて行くには、エルピスの存在は不可欠だと、僕は思います。