血管探索記

腫瘍や血管の病気のこと、日々に出会ったものから連想する科学、旅行記、コラムなどを記します。

サイジング(メジャーメント)

大動脈瘤をステントグラフトで治療するためには、完全に瘤と血流を遮断することが必要です。そのためには、瘤の入り口(心臓側)と出口(末梢側)に、少しずつ余裕を持たせてグラフトを置かなければなりません。これをシーリングゾーンといいます。そうしないと血流がグラフトの隙間から瘤内へ流れ込んでしまい、治療したことにならないからです。これを「エンドリーク(内部漏洩)」と呼びます。

 

ところが、エンドリークを恐れるあまり、瘤から上下に出すグラフトを長くしすぎると、今度は塞いではいけない大切な枝、主に腎動脈と内腸骨動脈(骨盤内臓器を養う血管)を塞いでしまうことになりかねません。あるいは太さが合わずに、グラフトが血管壁から浮いてしまったりすることになります。

 

こうしたことは、術中に考えながらやっていたのでは対応出来るはずがなく、事前に撮影したCTの画像から、遅くとも手技前日までには、三次元構築した画像を使って、どの組み合わせでステントグラフトをどう入れるか、全て周到に計画するのです。これを、サイジングと呼んでいます。

 

もちろん、ぴったりしたサイズのステントグラフトを考えておいても、実際に手術が始まると、その場の変化(例えばCTの画像から考えていたよりもやや形が変化した時など)に応じて、サイズを変えなくてはならないことも起こり得ます。そうしたことまで予測して、グラフトはやや多めの種類を準備しておくのが普通なのです。

サイジングは大動脈ステントグラフト治療における基本中の基本、つまり、いろはのい、ということになりますね。

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