グランド電柱
(宮沢賢治:春と修羅より)
あめと雲とが地面に垂れ
すすきの赤い穂も洗はれ
野原はすがすがしくなったので
花巻グランド電柱の
百の碍子にあつまる雀
掠奪(りゃくだつ)のために田にはいり
うるうるうるうると飛び
雲と雨とのひかりのなかを
すばやく花巻大三叉路の
百の碍子にもどる雀
これは僕の好きな宮沢賢治の詩です。
この中に出てくる「碍子」は「がいし」と読みます。多くは磁器製で、電線と支持構造を絶縁するために使われる、写真の様なものです。今日、ふと駅のホームからこの碍子を見ていたら、久しぶりにこの詩を思い出しました。
きっと賢治の時代、花巻に大規模な送電システムや大三叉路も本当は無かったでしょう。でも、広い空間の中で無数の雀が群れ動く様を、限りなく動的に表現したかったのでしょうね。