苦しい夜が明け、疲れた身体に鞭打つようにラッシュが始まる7時半頃、正社員さんが出勤してくる。そしてまずチェックされることは、金銭出納が正確であるかどうかだ。
簡単に言えば、前夜、社員が帰宅した際にチェックしたレジの金額と、現在の金額との差額を計算し、それがレジとクレジットカード伝票に打ち込まれた金額に一致するかを調べるのだ。ぴったり合うことなど、何故か皆無だ。大抵はやや金額の方が多い。つまり貰いすぎているということになる。原因は不明だ。
しかし、たまに足りないことがある。レジに多く打ち込んだ、という言い訳は却下で、もらい足りないということで、バイトに責任が転嫁される。そして、100円単位でバイト代から差し引かれる。(酷い話だと思いませんか?多いときはくれないんですよ!)
こんな理不尽なバイトだが、バイトたちは皆、思い思いに「反則」を働いて、自分の仕事を楽にしようと試みる。僕自信は気が小さいので、そのような犯行に及んだことはないが、同僚がやっているのを目撃したことが何度かある。
一つは「当スタンドでは、夜中のクレジットカード取り扱いは停止しております」と、言い放つやつだ。これは嘘。伝票を切るのが面倒だからこんなことを言う。
それから、もう一つ、これは犯罪に近いが、ガソリンスタンドの看板、あの遠くからでも見える明るいやつだ、の電気を消してしまうのだ。誰だって休みだと思って来なくなる。サービスエリアのガソリンスタンドというのは「緊急対応」という扱いだから、電気を消しちゃうのは、見つかったらしょっ引かれるかもしれない。そのかわり、「緊急用」なので、ガソリンは高いし、洗車機はないし、普通、オイル交換も車検もやっていない。とても偏ったガソリンスタンドなのだ。
その4へ続く