世の中にはいろいろな人がいる。さすがに夜中ともなるとあまり無理な要求は無いが、まだ正社員さんがいる夕方の時間帯には、ハプニングがある。
あるとき、店長が対応したお客さんが、エンジンルームの点検を無理矢理要求した。本来していないサービスである。しかし道を極めた方のようで、断ることも出来ず、店長はそこそこの点検をした。そして「問題ありません。大丈夫ですよ。」と伝えた。すると、その極道のおっさんは、凄みのきいた声でこういった。「おう。じゃあ、これやるからよ。これからもしっかりやんな。」そして小箱を店長に手渡したのである。
さあ、そこで店長が取った行動は?
その小箱をゴミ箱に放り込み、上から足でばしばしと踏んづけた。彼にしてみれば、ルーチンのゴミ捨て業務をしたにすぎない。
が、それが、である。
次の瞬間空気は凍り付いた。
「てめー、俺の好意を踏みにじりやがって、このバカやロー!」
店長が恐る恐る、ゴミ箱をのぞき込むと、そこにはぺっちゃんこに潰れたマクドナルドのハンバーガーがあった。固まっている店長を尻目にエンジンをかけた、その極道さん。
「まぁ、俺はいいけどよ。あー、もったいねー。次からはてめーが何を渡されたかぐらいは、確認すっことだな。あばよ。」
そういって、霧の彼方へ消えていった。
実は意外にいい人だった。店長はしばらくショックから立ち上がれなかったことはいうまでもない。
その6に続く