血管探索記

腫瘍や血管の病気のこと、日々に出会ったものから連想する科学、旅行記、コラムなどを記します。

青空が写るまで磨きます

僕が小学校4年生くらいの時、学級文庫に、戦後親を亡くした子供達が共同生活をする施設の話がおいてあった。「緑の丘の赤い屋根、とんがり帽子の時計台♪」という流行歌の時代に書かれた本だと思われた。その中で、少年たちが駅で靴磨きの仕事をして日銭を稼ぐという場面が出てくる。

彼らが自分たちで考えたスローガンは「青空が映るまで磨きます」。

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靴磨きというものが良く解らなかった当時の僕は、一生懸命想像した。靴をぴかぴかにすることの意味、わくわくする気持ち、優越感… それが今でも残っている。靴磨きをするのも、されるのも大好きだ。それなりの道具も揃えている。

 

今回天王寺に寄る機会があって、1箇所、まるで世界遺産の様な古い靴磨き店を発見した。中央改札を出て、やや右の方へ行った階段下である。MIOの中とは言え、そう、ちょうどハリーポッターッが住んでいたような小さなスペースである。

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「お願いできますか」

「…」(70代くらいの職人があごで椅子へ座れと合図する。)

「はい」僕がすわると、その位置が気に入らなかったらしく、

「尻をもっと奥へ!」

「は?」

「尻をもっと奥へゆうとるんや!!」

  

なんだか客なのに怒られながらも、その一回350円の靴磨きは、僕の靴を全く不満なくピカピカにしてくれた。

あいにくの天候で青空は映らなかったが、僕の心に小さな太陽が昇った瞬間だった。