翌日、僕の宿泊するホテルに集合した5人は海へと出かけた。せっかく地中海まで来たのだから海水浴をしなければ。
ホテルのプライベートビーチへ行き、夕方まで巨大な砂の楼閣を作り、泳ぎ、そして昨夜のことを思い出しながら青空を見上げた。海の水はまだ冷たかったが、濁りなく澄んだ水と自由に泳ぐ魚たちにみとれていたら、そんなことはあまり気にならなかった。
画像引用『フリー写真素材ぱくたそ』https://www.pakutaso.com
ふと目を上げると、サーファーがサーフボードと一緒に空を飛んでいる。僕は見たことがなかったので、ものすごくびっくりしたが、ほかの仲間は驚かない。これはカイトボードというスポーツで、もとはヨットの救助用に開発され、1998年頃欧米において競技としての地位を確立した。日本には1999年に初めて導入されたというのだから、同年からドイツに来てしまった僕が知るはずはなかった。
海水浴の後は別れが待っていた。
皆、欧州各地に帰っていく。
しかし、中身の濃い時間を共に過ごしたからか、さほど寂しくはなかった。むしろ次の出会いが楽しみだと思えたほどである。
ドイツ語学校で邂逅した5人の絆は、この南仏プロバンスで過ごした時間によってさらに強いものとなった。僕にとって、ここで見聞きしたことはかけがえのない思い出であり、人生の中でひときわ明るく輝いている。