血管探索記

腫瘍や血管の病気のこと、日々に出会ったものから連想する科学、旅行記、コラムなどを記します。

結果より原因に切り込め・・・とはいうものの。

私が医学生の頃、所属していた医学英語のサークルでフィンランドの先生をお招きして勉強会をしていました。彼は今では当たり前になったキシリトールの研究をされていましたが、当時はまだ、誰もそんな物質を知りませんでした。

 

ある時、勉強会で当てられ質問されました。

「今、最も急いで発展させなければならない医療分野は何ですか?」

 私はしばらく考えて「救急医療です」と答えました。

 

当時、交通事故死者数が年間一万人を超え、まさにこれが喫緊の課題だと思ったからです。昭和30年代(1955年 - 1964年)以降交通事故死者数の水準が日清戦争での日本側の戦死者(2年間で1万7,282人)を上回る勢いで増加したことから、当時交通戦争という言葉があったくらいです。

 

しかし、彼の反応は意外なものでした。「それは事故を減らせば済むことだ。医療ではなく交通行政の仕事ではないのかね?」

 ・・・・確かに。

 

私が専門にしている疾患の一つ、大動脈瘤も同じかも知れません。まずは動脈硬化と高血圧を減らすことが一番の早道なのです。私たちのしている治療はいつか過去のものとなる。なって欲しいのです。

「昔は大動脈瘤なんて病気があったんだってよ。へえ!怖かったね-」なんて医学生が会話している姿を夢見て、それまでの、きっと短くはない道のりを歩んでいるのです。

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