血管探索記

腫瘍や血管の病気のこと、日々に出会ったものから連想する科学、旅行記、コラムなどを記します。

風が巻く道

仕事に疲れたとき、この空を眺めにこの場所に来る。

ここは地下の搬入口。地上と地下をつなぐ細い抜け道。行き場を失って巻いている風は、そこで立ちつくす人の耳元でささやく。

私はどっちに吹けばいいの、あなたはどっちに吹きたいの、と。

未練を残す初夏の太陽と、冬を切り抜けて再び緑と自信にあふれたユリノキが、少しの間対話する。

明日はどんな風が吹き、空はどんな色をするのだろう。

やがて夜の帳が降りるまで、ただ眺めていたい空である。

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