血管探索記

腫瘍や血管の病気のこと、日々に出会ったものから連想する科学、旅行記、コラムなどを記します。

性格は意識より深し

 

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人間の性格は千差万別。一朝一夕に変わることはない。

 

心配性が身についている患者さんのカテーテル検査中に、挿入したカテーテルのわずかな刺激(普通の人なら何でもないレベルの刺激)が血管を激しく縮ませてしまうことがある。

これはもちろん無意識の現象だ。血管を意識的に拡張させたり縮めたりすることなど、人間には不可能だ。心臓を意識的に止められないのと同じように。

 

つまり、性格というものは自律神経(交感神経や副交感神経)のレベルまで、深く浸透しているのだから、意識だけで変わる代物ではないのだ。(慣れてくると、患者さんの性格から、カテーテル検査の際に血管がどんな挙動をする可能性が高いのか、予測できるようになる。)

 

事実はそういうものであるはずなのに、この世の中には、「考え方で簡単に人生が変わる」みたいな本が多過ぎる。書店に行って自己啓発書のコーナーに行き、目をつぶって、どれか一冊本を手に取れば、多分その本には、そんな内容のことが書いてあるに違いない。

 

もちろん、そうした「意識の持ちよう」が大切であることは否定しない。むしろ非常に大切なことであり、哲学が太古から研究されてきた理由もそこにある。「人間としてどうあるべきか」は、深く追求すべき、人生の大きな課題である。

 

昨今における書籍が有する問題は「すぐに」とか「簡単に」という副詞の部分だ。

そう簡単か?そんなことはないだろう。

上に述べたとおりだから。

  

あなたは正しい意識のコントロールで、「なりたい自分」に、きっと変われるだろう。

  

だがそれには恐らく長い時間が必要であり、心の癖を自律神経のレベルまで落とし込んでいかなければいけないのだ、ということから目を背けてはいけない。