血管探索記

腫瘍や血管の病気のこと、日々に出会ったものから連想する科学、旅行記、コラムなどを記します。

プロバンスの結婚式⑤

プロバンスの結婚式はいよいよ佳境に入った。そこは瀟洒なレストラン。手入れの行き届いた南国情緒あふれる植物が、駐車場からアプローチへと導いてくれた。会場はドイツ語を話すグループとフランス語を話すグループに分けられたが、どちらにも所属する人も、僕らの親友を含めて幾人もいた。

ヨーロッパは言語のるつぼである。僕はいつもそこで暮らす人々を羨ましく思い、そこで生活することを夢見ていたから、ドイツ語グループに入れてもらえたことを、とても幸せに思った。

 

結婚披露パーティは堅苦しくなく、スピーチなども最小限で、参加者の会話をメインとして和やかに進んだ。とても素晴らしかったのは、フランス料理のフルコースである。さすがにメニューの詳細は忘れてしまったが、前菜から魚、肉料理まで、それぞれ二品目以上はあり、その度にシャンパンやワインがかわっていった。もちろんグラスごとである。ワインには産地に適したワイングラスという物がある。それを省略することなど、絶対に無いのだ。

 

会話を楽しんでいるとあっという間に時間は過ぎる。気づけば午前零時を回っていた。ところが、そこからがパーティの本番であった。

まずデザートワゴンが登場し、当時流行していた葉巻(シガー)も載せられていた。新郎の友人がプロ顔負けの手品を披露したり、新婦の友人がコーラスをしたり。そして夜は更けていった。

 

もう明け方という時間になった頃、参加者一同、本当に力を使い果たした様子で三々五々家路についた。僕ら仲良し5人組は、皆と別れを惜しみ、最後まで残った。そして相談したのは、明日、どうやって遊ぼうかという話しである。翌日、いやもうその日になっていたが、お昼に、僕が泊まっている海辺のホテルに集合ということになった。

 

プロバンスの結婚式は無事終わったが、僕らの夏は、まだもう少し続いた。

Slice of paradise